BAM鎌倉を知る
BAM鎌倉とは
鶴岡八幡宮から徒歩1分、鎌倉のメインストリートに誕生した英国アンティーク博物館です。英国文化に強い思い入れと情熱を注ぐ館長の土橋正臣が長年に渡ってコレクションした本物のアンティークを展示しています。
建物の設計は、英国ヴィクトリア&アルバート博物館の分館 V&A ダンディを手がけた「隈研吾氏」が担当。隈氏は、古都・鎌倉の参道にふさわしい建物として、伝統工芸の鎌倉彫からインスピレーションを得たファサード(外装)をデザインしました。
館内は1階から4階までの全4フロアから構成され、それぞれ時代やテーマの異なるアンティークを展示しています。各フロアは、シャーロック・ホームズの部屋やヴィクトリア時代などテーマに沿った空間でコーディネートされています。さらに、1階のグランドフロアでは本物のビンテージロンドンタクシーが登場します。
鎌倉と英国の深い繋がり
鎌倉と英国の繋がりとして、ビクトリア時代に英国で始まったナショナル・トラストの運動がある。それは歴史的に意味のある土地や資産を寄付により永久に保存するというものであり、多くの景勝地が遺産として保持されてきた。日本で初めてナショナル・トラストの思想が導入された場所が鎌倉。1964年、鶴岡八幡宮の裏山の開発計画が持ち上がった。自然を守るために英国のナショナルトラストを知る作家・大佛次郎氏が立ち上がり、チャリティーを募って、その開発を防いだ。それがきっかけとなり、全国に古都保存法が成立して多くの歴史的に重要な自然や建築物が守られている。英国の古き良きものを大切に引き継ぐ想いと『鎌倉』が結びついて、今なお、素晴らしき文化遺産が継承されている。
また、隈研吾氏は、東京2020オリンピックのメインスタジアムである国立競技場を建設する前年の2018年、英国スコットランド初のデザインミュージアム「V&A ダンディ」をデザインした。その博物館はスコットランドの崖を再現した土地に根付いたデザインとなっている。そこには、日本文化の影響を受けた建築家チャールズ・レニーマッキントッシュの茶室(ティールーム)が再現されている。つまり英国の博物館のメインとなる展示物が東洋のデザインであり、それを建てた建築家が日本人の隈研吾であるという事実は重要である。隈氏はかつて、「小さな建築」という本を出版している。そこに示された小さな単位とは「茶室」。小さなものが重なりあい、大きなものを形作っているという考え。そこで、今回、英国の大きな博物館と鎌倉の小さな博物館の対比をすることで、この概念がなお一層引き立つのではないかと考えた。
Director
土橋 正臣Masaomi Dobashi
英国アンティーク博物館 BAM鎌倉
館長
1966年生まれ。長崎大学大学院修了。外資系製薬会社の研究員を経て、2007年 株式会社ファーマブリッジを設立。また、大学院卒業後に初訪問したイギリスの文化に衝撃を受け、2012年鎌倉アンティークスを設立。英国アンティーク輸入やイギリス関連イベントのコーディネートを手掛ける。日本一のロンドンタクシーコレクターとして、本物のブラックキャブを年代別に所有する。また、2022年、長年の夢であった英国アンティーク博物館「BAM鎌倉」をオープンさせる。建築デザインは隈研吾氏が担当。古き良きものを継承する啓蒙活動の一環として「No Antique No Life」を掲げて次世代に向けてアンティークの素晴らしさを発信中である。
Architect
建築家隈 研吾
東京大学建築学科大学院修了。1964年東京オリンピック時に見た丹下健三の代々木屋内競技場に衝撃を受け、 幼少期より建築家を目指す。大学では、原 広司、内田祥哉に師事し、大学院時代にアフリカのサハラ砂漠を横断し、 集落の調査を行い、集落の美と力にめざめる。コロンビア大学客員研究員を経て、1990年、隈研吾建築都市設計事務所を設立。 これまで30か国を超す国々で建築を設計し、(日本建築学会賞、フィンランドより国際木の建築賞、イタリアより国際石の建築賞、 ほか)、国内外で様々な賞を受けている。その土地の環境、文化に溶け込む建築を目指し、ヒューマンスケールのやさしく、 やわらかなデザインを提案している。また、コンクリートや鉄に代わる新しい素材の探求を通じて、 工業化社会の後の建築のあり方を追求している。
Advisory Member
館長
設計室長
代表取締役
代表取締役
代表取締役
クリエイティブディレクター
研究家
代表取締役
アンティークとは100年以上経過したもの
パティナ(古艶)を感じてほしい
アンティークとは人が創り、100年以上経過したものをいう。その本物に触れることで現代人は英知を受け取ることができる。かつて人類が造りあげた引き継がれるべきデザイン。つまり普遍的に人々を魅了するもの。それがアンティークという名のもとで残されているのである。次世代にアンティークを引き継ぐことの大切さを伝えるためには、まずは本物のアンティークを愉しんでもらうことが一番であり、物や人を大切にする第一歩であることを考えた。世代を超えるアンティークには常にパティナ(古艶)が存在して人々を魅了してやまない。それは長い時を経て初めて現れる歴史を吸い込んだ「艶、つや」である。不思議なことに無意識のうちに若い世代はその事実に勘づいており、自らアンティークを求め始めている。彼らにもっと古き良きものの素晴らしさを知ってもらうことが英国アンティーク博物館【BAM鎌倉】の役割であると思う。
日本と英国との深い繋がり
若者がアンティークを新しいと感じることは素晴らしい
英国と日本の繋がりは深く、例えばスコットランド出身のチャールズ・レニー・マッキントッシュという建築家は、日本の建築デザインに影響をうけティールームを造った。そのデザインはまさに日本そのものであり、私が2018年に設計デザインしたV&A Dundeeのデザインミュージアムに再現されている。そこには英国アンティークと近代的な電気自動車が展示されており、OLD&NEW という時代を超えた融合ともいえる。今回、鎌倉の歴史ある段葛の参道に建つ英国アンティーク博物館BAMには、土橋氏の集めた100年以上の歳月を吸い込んだ純粋なアンティークが並ぶ。そう言った意味で建物のデザインは、どこまでも純粋でなければならないと考えた。幾度となく熟考を重ねた結果、すべての窓を無くしシンプルに整え、鎌倉の伝統文化を象徴する鎌倉彫にインスピレーションを受けたファサードを採用した。かつて英国ナショナルトラストの影響を受けた保全活動で守られた鶴岡八幡宮の裏山、御谷(おやつ)から連なる里に根差したBAM建築は、鎌倉で大切に引き継がれる文化施設として愛されることになるだろう。